導入事例
Polarify eKYC導入

三井住友銀行「オンライン本人確認Polarify eKYC導入」が変える銀行サービス(連載第5回)

三井住友銀行「オンライン本人確認Polarify eKYC導入」が変える銀行サービス(連載第5回)
Interview

2019年10月より、三井住友銀行『口座開設アプリ』で新機能がリリースされ、eKYCによる口座開設ができるようになりました。eKYCを使って銀行口座を開設できるアプリとしては国内初。このサービスが提供できる顧客メリット、事業者としてのeKYC検討から開発・リリースまでのエピソード、さらには新ビジネスの展望について、三井住友銀行・小西裕二グループ長にお聞きしました。

eKYC※搭載で、口座番号が最短即日発行可能に!

──2019年10月から開始された「『口座開設アプリ』を利用した口座番号確認サービス」について教えてください。今までのサービスからどのように変わったのでしょうか?

(小西氏、以下同)『口座開設アプリ』から口座開設を申し込む時に「Polarify eKYC」を用いて本人確認を実施していただくと、Web上で口座番号を確認できるようになりました。

今までのアプリでは、お客様はキャッシュカードを郵送で受け取るまで新しい口座番号がわかりませんでした。郵送の場合、特にひとり暮らしの方に多いのですが、不在が続くと郵送物が受けとられずに戻ってきてしまいます。実は、その戻ってきてしまう割合は2~3割にもなります。

今回のサービスリリースによって、キャッシュカードを受け取る前にWeb上で口座番号が確認できるようになり、これまで1~2週間かかっていたものを、即日~1週間後に短縮することができました

リリースから約2カ月たちましたが、このアプリから口座開設を申し込まれる方の約6割の方に「Polarify eKYC」を利用していただいています。

※eKYC…オンライン上で完結する本人確認。「electronic Know Your Customer」の略。
下記、参照記事

金融機関、宅建業、貴金属取扱業のみなさんへ。eKYCを導入したほうがいい理由とは?(連載第1回)

導入からリリースまでの道のりは?

――「Polarify eKYC」を導入しようと思われたきっかけは何でしたか?

まず、2018年11月より犯収法が改正され、本人確認がオンラインのみで完結できるようになったことが背景にあります。

この改正により、郵送物の受領というアクションを待たずにアプリ内で本人確認ができるようになると、「口座番号を早く知りたい!」というお客様のニーズに応えられると考えました。
「給与の振込口座をすぐに確認したい」といったニーズや、塾や家賃、その他料金の「引き落とし口座をすぐに登録したい」などが、多くのお客様の要望として挙がっていましたから。

――導入を決めてからは、どのようなメンバー・体制で進められたのでしょうか?

『口座開設アプリ』を開発しているベンダー、「Polarify eKYC」を提供しているポラリファイ、そして銀行側の我々、3社でチームを組みました。銀行側としては主に担当者1名、責任者としての私の2名です。

――開発時のトラブルや大変だったこと、工夫したことなどを教えてください

まず困ったのはチーム内のコミュニケーションです。完全にアプリ内のみで本人確認を完結するためにはeKYC機能をアプリに組み込む必要があり、3社でチームを組みましたが、最初はなかなか足並みがそろいませんでした。これについては、週1回、3社で集まってのミーティングを行うなど、密なコミュニケーションを重視することで改善していきました。

大きな課題として取り組んだのは本人確認マッチングにかかる時間の短縮です。システム側で免許証の画像と本人の顔写真(セルフィー)を照合して本人確認しているのですが、当初はその照合に5~6秒かかっていました。このタイムラグについて、お客様がスマートフォンの画面の前で5秒も待つのはありえないと考え、ポラリファイに相談させていただき、最終的には1~2秒まで改善することができました。ユーザー体験という観点では「待たせたくない」というこだわりが一番強く、最優先課題として取り組んでいただきました

初期段階では照合率も大きな課題でしたね。部内にいる全員、約100人に本人と認定されるかをテストしてもらったところ、照合できたのは予想以上に少なかった。照合の精度が高く厳しすぎて照合できなかったのです。これについてもポラリファイに精度をチューニングしてもらった後は、9割が照合できるようになりました。

(ポラリファイ小野)生体認証の精度自体はほぼ100%なのですが、お客さまが撮影する免許証や自撮り写真(セルフィー)の画質等は様々なので、必ずしも性能通りの結果になるわけではありません。擦り切れているような免許証もあれば、ものすごく丁寧に扱われているものもある。裸眼なのか、メガネをかけているのか、また、メガネの度数が強いと顔の輪郭が少し歪んだりもする。撮影される場所によっても撮影画像の質は左右されます。明るい部屋、暗い部屋、免許証をのせた机の色など。さまざまなシチュエーションが考えられるなかで、あらゆる組み合わせを試しながら、事業者様と一緒に最適な設定値を考えています。

――リリースまでにはどのくらいの期間を要しましたか?

(小西氏)eKYC導入そのものの検討は2018年夏あたりから始めました。SMBCグループのポラリファイだけでなく競合サービスをじっくり比較・検討を行った結果、2019年1月に契約。6月のアプリリニューアル後にeKYC機能を組み込み、10月にリリースとなりました。
アプリ開発時に顔認証の仕組みを考慮してはいましたが、3~4カ月という短納期でした。

好調なスタートをきれたワケは?

――リリースから2カ月たらずで、アプリから口座開設を申し込まれる方の6割が「Polarify eKYC」を利用されているのは驚きです。何か秘策があったのでしょうか?

銀行側の主なメンバーとしては担当者と私の2名でしたが、それとは別にUI/UXに詳しい部内のデザイナーにも確認してもらいながら、お客様にストレスがないようなデザインやインターフェースを考えられたのが大きな理由だと思います。

部内にはインハウス・デザイナーが5名います。デザインのほかにも銀行業務を勉強して知識をつけていて、彼らが手がけた『三井住友銀行アプリ』は2019年度グッドデザイン賞を受賞しているほどです。

――アプリ内でeKYCを利用して銀行口座を開設できるサービスとしては国内初。前例がない不安はありましたか?

ファーストユーザーとしての不安はもちろんありました。「本当にできるの?」って(笑)。技術面の不安のほかにも、銀行として実績のないものをサービス提供することにネガティブな反応をする人も多かった。
でもそこは、お客様目線のほうが大事です。お客様のニーズを優先し、導入に踏み切りました。

また、私自身、長らく『三井住友銀行アプリ』を所管していて、そのUI/UXについてこれまでずっと見てきた経験がありました。そういう点からも「お客様がどう思うか?」を考え抜いてきた知見を活かせると思っていました。

――ポラリファイと組んでみていかがでしたか?ここがよかった!と思われる点を教えてください

なんといっても技術力の高さですね。ちゃんと分析して、たとえば照合率などについても海外動向含めて改善策を見出してくれる。こちらが求めているものに対して、アウトプットの質が高い。最優先としていたマッチングに要する時間についても、すぐに対応してくれました。想定していた以上にポラリファイの対応はよかったです。

(ポラリファイ小野)ありがとうございます。特にチューニングは技術を必要とする分野で、精度が厳しすぎると照合ができず、緩すぎると不正が起こりかねない。その微調整にもスピーディーに対応させていただいています。

今後を見据えた新ビジネスとは?

――eKYCのような顔認証が浸透していくと、ほかのサービスへの展開・応用なども考えられそうですね。どのようなプランをお持ちですか?

(小西氏)まさに生体認証、顔認証はインターネットバンキングの振り込み時に利用したいですね。送金するにあたっての最終的な認証になればいいなと。パスワードによる2段階認証だと、お客様がだまされてしまっては防ぎようがない。生体認証も活用した多要素認証ができれば不正送金をより防げるのではと思っています。

(ポラリファイ小野)不正送金もそうですが、振り込め詐欺対策もしていきたいですね。実態としては振り込め詐欺のほうが不正送金よりも被害額が大きいんです。こういった社会的意義のあるセキュリティー対策に貢献していきたいと考えています。

生体認証だけではなくワンタイムパスワードや、最近だと歩き方による歩容認証というのもあります。それぞれの認証の良し悪し、つまりノウハウをためていき、各企業へのセキュリティコンサルティングやソリューション提供に活かしていきたいです。

(小西氏)セキュリティー専門の会社はたくさんあれども、銀行・金融業務に詳しくないこともあります。ポラリファイには「銀行のお客様だったらこういう認証が使いやすい、こういうセキュリティー対策がいい」など言ってもらえるとありがたい。銀行内にセキュリティーがわかる人は少ないですし、対策を考えるにしても限界があると思うので、そういったちょうどいい立ち位置にポラリファイがいてくれるとうれしいですね。

小西裕二

三井住友銀行
リテールIT戦略部 プロジェクト推進第一グループ グループ長

小西裕二

Polarify eKYCを導入して
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